非正規労働者の割合の推移
有業者に占める非正規労働者の割合は、30年前の1988年時点では、男性で8.1%、女性で35.1%でしたが、労働者派遣法の改定やリーマン・ショックを経て、2017年現在では、非正規労働者の有業者全数に占める割合は、男性で21.7%、女性で56.0%へと増加しています。
「平成24年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)を加工して作成
(https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/)
正規雇用、非正規雇用労働者の割合の時系列推移をみると、特に変化が大きい時期は労働者派遣法の改定があった1996年、1999年、およびリーマン・ショックの影響が本格化した2009年に見られます。
労働者派遣法とは何か
労働者派遣法は、正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」と言います。1986年に施行された法律であり、制定以前は違法とされていた労働者派遣事業を法的に認めた法律です。
制定当初、労働者派遣法は、社内での人材確保が難しい専門的な知識、技術または経験を必要とする業務を派遣対象としていましたが、実際には86年時点の許可業務となった13業務にはファイリング、受付・案内が入っており、熟練を要さない業務が含まれていました。そのため派遣対象の許可業務は高度な知識・技術・経験を要さない業務へと拡大解釈されていき、96年改定では許可業務が26業務へ増え、やがて99年の派遣法改定により、禁止業務となる港湾運送、建築、警備、医療、物の製造以外は原則自由化されました。
労働者派遣法の改定は、非正規雇用の労働者の割合の時系列変化とリンクしており、特に25~34歳男女非正規雇用労働者の96年改定以降の非正規雇用労働者の増加・正規労働者の減少との因果関係は疑われて然りでしょう。
「平成24年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)を加工して作成
(https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/)
下のボタンを操作して年代と性別を指定すると、そのカテゴリにおける雇用形態の分布を示す円グラフが表示されます。
男
女
雇用形態
年齢層
正規労働者の割合の推移
非正規雇用労働者の割合の増加に呼応し、有業者に占める正規労働者の割合は減少を続けており、30年前の1988年時点では、男性で91.9%、女性で64.9%でしたが、2017年現在では男性で78.3%、女性で44.0%へと変化しています。バブル崩壊後の90年代前半、正社員の大規模なリストラが続きましたが、この時期から正規雇用労働者の割合が減少して行っているという見方も可能です。
女性の社会進出
この30年の間に働く女性が増えたことについては様々な解釈が可能です。女性の雇用機会が確保されたとも見れますし、家庭に入るという選択肢を取りにくい社会となったとも言えるでしょう。森岡孝二「雇用身分社会」には、「結婚や出産の機会を逃し、心の内に後悔を抱える女性管理職は少なくない」という一文が紹介されていますが、これは雇用形態と当人の幸せは必ずしもリンクしないことを示しています。
無業者の割合の推移
人口に占める無業者の割合の推移も調べてみると、25~34歳の男性だと1988年時点では人口に占める無業者の割合は14.7%だったが2015年では13.9%となっただけで、その変化は1%以下ですが、働く女性は増え、25~34歳の女性だと1988年時点では無業者の割合が59.2%だったが2015年では30.2%となり、大きく増加しました。
リーマン・ショック後、特に働き盛りの25~34歳男性において、無業者の割合にほとんど変化が無い一方、正規雇用の労働者が減っている原因は、この層で非正規雇用の労働者が増えていることが原因です。