文理別の就職内定率の年次推移
政府が公開する統計データに基づき、大学卒業予定者の就職内定率の年次推移を文理別にグラフとして示しました。大学卒業予定者の就職内定率の推移は文系と理系で異なる振舞いを示しています。
下図は、「大学,短期大学,高等専門学校及び専修学校卒業予定者の就職内定状況等調査」に基づき作成した、大学卒業予定者の卒業前年10月時点での就職内定率の推移を文理別に示したグラフです。
「平成27年度大学,短期大学,高等専門学校及び専修学校卒業予定者の就職内定状況等調査」
(文部科学省)を加工して作成
卒業前年10月時点の大卒の就職内定率は、文系および理系ともに2011卒で最悪の値“57.4%”(文系)および“58.3%”(理系)を記録しています。2年前の2009卒の70.4%(文系)、68.1%(理系)と比べて10~13%低い数値です。2011卒前後の2010卒(会社による内定取り消しが始まった代)、2012卒(東日本大震災中に就活)と比べても2011卒の就職内定率は悪く、2011卒は就職超氷河期の世代の中でも最も職に就くこと自体が厳しい代であったことは統計データから間違いありません。
文系では、リーマン・ショック直後の2010卒から急激に就職内定率が落ち込んでいます。2010卒、2011卒、2012卒はリーマン・ショックと東日本大震災の影響により、就職する事それ自体が極めて難しかった就職超氷河期と呼ばれる世代であり、就職した大学卒業者もその就職先の企業において、人材のランクと企業のランクに相当なミスマッチが生じているはずの代です。
一方で理系においては、2010卒から2011卒の間で激しい落差があり、就職超氷河期と言われ始めた2010卒では、理系においてはリーマン・ショックの影響を実はさほど受けておらず、その1年後の2011卒から急激に就職状況が厳しくなったと言えます。貴方の職場を見ても、同じ就職超氷河期の世代として括られる2010卒と2011卒の人材を比べると、理系職においては、人材の質のランクが数段異なっているのではないでしょうか?(あるいは、既に転職してしまった人の割合が2010卒と2011卒の間で大きく異なっているのではないでしょうか?)
国公立大卒業予定者の就職内定率の推移
国公立大卒業予定者の就職内定率の年次推移は、後に示す私立大卒業予定者の就職内定率の年次推移と比較すると、様相が異なっていることが認められます。
まず文系についてですが、2009卒で就職内定率は最も良く、顕著なピークが顕れていますが、リーマン・ショック発生直後にすぐにそのピークは消え、2011卒まで年5%程度低下し続けました。2009卒で76.1%だった就職内定率が、2011卒では11.7%減じ、64.4%へ低下しました。しかしこの値は2003卒まで続いた就職氷河期の際の就職内定率よりは良い数字であり、国立大文系卒の学生にとってはリーマン・ショックは2003卒までの就職氷河期と同レベルであったと思われます。
一方の国公立大の理系についてですが、興味深いことにリーマン・ショックが発生した後のはずの2010卒が就職内定率が、「バブル期を超える」と言われた2009卒よりも良い数字となっており、2011卒から急激に就職内定率が低下するという振る舞いが見られます。グラフの描画ミスを疑ったほど驚くべきデータです。2011卒国公立大理系卒の学生は、募集人員数の悪化それ自体と、前例のない急激な変化という極めて劣悪な就職戦線の中で、少ない情報を基に就職先を選ばなければならない状況が発生していたと見られます。
「平成27年度大学,短期大学,高等専門学校及び専修学校卒業予定者の就職内定状況等調査」
(文部科学省)を加工して作成
私立大卒業予定者の就職内定率の年次推移
私立大卒業予定者の就職内定率の年次推移は、国公立大卒業予定者のものと比べると、①文系において好況だった2009卒の就職内定率のピークが顕著ではない、②理系においては、国公立大では2012卒の就職内定率に2011卒からの回復が見られるが、私立大においては2012卒は依然2011卒と同水準に落ち込んでいた、という違いが見られます。
リーマン・ショックの衝撃は2011卒理系で最も激しく、2011卒の理系の学生は、自分たちの状況を把握することはまず不可能だったと思われます。先が見えない崩壊しかけの社会の中、どの程度自分たちの代が悪い状況なのかわからないまま、長い就職活動に巻き込まれてしまっていたものと推測されます。
「平成27年度大学,短期大学,高等専門学校及び専修学校卒業予定者の就職内定状況等調査」
(文部科学省)を加工して作成