有効求人倍率の年次推移(長期時系列)

厚生労働省が公開するデータに基づき、有効求人倍率の時系列推移をグラフ化しました。
2009年のリーマン・ショック直後から2012年まで転職市場は冷え込みが続いていましたが、以降2019年末まで劇的に有効求人倍率は回復し、バブル期の水準まで回復しました。
しかし、2020年より始まった新型コロナウイルスの流行により、有効求人倍率は急激に落ち込みました。

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下図は、「一般職業紹介状況」に基づき作成した、公共職業安定所の有効求人倍率の推移を示すグラフです。

有効求人倍率の年次推移(長期時系列)

「一般職業紹介状況」(厚生労働省)を加工して作成

平成元年以降、バブル崩壊により有効求人倍率は下がり続け、就職市場は「失われた10年」と呼ばれる氷河期に入りました。1999年には有効求人倍率は0.34という極めて低い数値を記録しています。2005年以降から回復し、その後2008年まで有効求人倍率は上昇を続けますが、2008年9月15日、リーマン・ブラザーズ破綻による世界恐慌(リーマン・ショック)が起こり、有効求人倍率は急激に減少、8ヶ月後の2009年5月に史上最低値の0.32を記録しています。
リーマン・ショックと東日本大震災を経験の後、有効求人倍率は回復・上昇を続け、2019年末までに転職市場はバブル期と並ぶ好況な状態となり、2019年12月の有効求人倍率は1.68でした。
しかし、2020年より始まったコロナ禍のため、有効求人倍率は急激に落ち込み、2020年7月には1.05となりました。

「有効求人倍率」とは何か

厚生労働省が公開するデータ中の有効求人倍率とは、厚生労働省の管轄機関である公共職業安定所(職安、ハローワーク)が業務とする求職者の職業紹介に関する統計値の一つです。全国の職業安定所には、雇用主から求人票が届き、また、求職者も職業紹介を受けるため求職者として職業安定所へ登録をします。一つの求人票は、新規登録されたものは有効ですが、採用が決まったり、あるいはその他の理由により求人がやがて終了します。厚生労働省は有効求人数という量を次のように定めています。

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【月間有効求人数】
前月から繰越された有効求人数(前月末日現在において、求人票の有効期限が翌月以降にまたがっている未充足の求人数をいう。)と当月の「新規求人数」の合計数をいう。

同様に求職者数についても、新規登録された求職者の分は有効ですが、採用が決まったり、あるいはその他の理由により就職活動をやがて終了しますので、時期により有効と無効があります。厚生労働省は有効求職者数という量を次のように定めています。

【月間有効求職者数】
前月から繰越された有効求職者数(前月末日現在において、求職票の有効期限が翌月以降にまたがっている就職未決定の求職者をいう。)と当月の「新規求職申込件数」の合計数をいう。

有効求人倍率とは、有効求人数を有効求職者数で割った値を言い、公共職業安定所が最大でどれだけの割合の求職者に職業を割り当てることができるかという指標となります。有効求人倍率が1.0より多ければ、理想的には公共職業安定所に登録されている求職者全員に職業を割り当てることができます。1.0より低いと、求人数が求職者数よりも低いため、必ず職業紹介できない求職者が現れます。有効求人倍率0.5以下というのは異常な数値で、公共職業安定所ですら半数以下の求職者にしか職業を紹介できない状態を表します。

もちろん求職者にも職業の適性がありますので、有効求人倍率そのものが求職者に対する求人数の充足率を示しているわけではありません。また、公共職業安定所を使い就職活動をする方の割合も限られているため、民間の職業紹介事業者(転職エージェント)を介して就職活動をする方や、全く職業紹介を受けずに自分で就職先を探す方も一定数いますので、転職市場全体における求人数/求職者数を表しているわけでもありません。しかし職業安定業務統計における有効求人倍率は、転職市場の景気を考える上で良い指標となります。
また、定義上、新規学卒者は求職者に入っていません。

有効求人倍率と大卒内定率の関係

有効求人倍率と新規学卒者の内定率とは密接な関係があります。有効求人倍率は中途採用の動向を測る場合に良い指標となり、同時に企業の業績を見る上でも有用な指標です。
中途採用は一つの求人の発生から採用決定までのサイクルが数ヶ月以内であるため、経済状況の変化が即座に有効求人倍率に反映されるものですが、新規学卒者の採用は、採用の計画が2年程度前から決定されるため、経済状況が内定率に反映されるまで遅延が生じます。そのため、有効求人倍率と新規学卒者の内定率は上昇下降ともに2年程度のズレがあります(下図)。

有効求人倍率の年次推移(長期時系列)

「一般職業紹介状況」(厚生労働省)および
令和元年度大学,短期大学,高等専門学校及び専修学校卒業予定者の就職内定状況等調査
(文部科学省)を加工して作成

有効求人倍率が最低を記録したのは2009年5月ですが、大卒内定率(卒業前年10月時点)が最低となった代は2009年に就職活動をしていた2011卒でした。大卒内定率は調査対象となった大学生が就職活動をしている期間の経済状況を反映するため、このようなタイムラグが発生します。

  1. 関連リンク
    1. 都道府県別の有効求人倍率
    2. 就職内定率の年次推移
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